逆算したらもう余生

仕事、結婚、恋愛、すべてに疲れて混沌とする世界の狭間でひっそりと生きています。しばらくはブログ引越しの為、過去記事が多いです。

地域猫クロちゃん

うちから徒歩数十秒の古い二階建てアパート。お年寄りしか住んでいないそのアパートの前には、クロちゃんというキジトラの猫が数年前から居着いていた。


元々そのアパートの一人暮らしのおじいさんが飼っていた猫なのだが、そのおじいさんが遺体で近所の手賀沼の近くの公園で発見された。金銭トラブルからの殺人事件で、ほんの一瞬だがアパートにはドラマで見るような黄色いテープが貼られ、立ち入り禁止になっていた。当然ながらそのまま中にいることも許されなくなったクロちゃんはそのまま野良猫となった。
事件を知っていた近所の猫好きはみんなでクロちゃんを守ることにした。隣に住んでいたおばあさんは猫に興味がなかったようだが、玄関先に水とカリカリの猫エサを置くようになった。
(事件の詳細)
http://news0718.blog.so-net.ne.jp/2012-12-19

 

私は犬を連れてることが多く、はじめは犬を怖がりクロちゃんは逃げていたが、うちの犬もクロちゃんも慣れたのか、犬がいても近寄ってくれるようになった。


大雨や台風や真夏や真冬。よくクロちゃんのことが気になったが、なんだかんだでいつも生き抜いていた。


仲良しのご近所さんがちゅーるを持ち歩いていたのを真似して、以前一緒に住んでいた彼氏はたまにちゅーるをあげていた。クロちゃんはそれをいつも喜んで食べていた。


今年も寒い冬を乗り越え、4月の暖かい日にいつもどおり日向ぼっこをしながら眠るクロちゃんに「あたたかくなってよかったね」と声をかけていた。


しかし、4月の下旬になるころ、アパート前に水も餌もないことに気づいた。
同時に何日もクロちゃんを見かけていないことにも。
嫌な予感もよぎったが、とにかく毎日周辺を見渡した。クロちゃんを見かけることはなかった。
いつもクロちゃんにちゅーるをあげていたご近所さんと話をしたら、その人も4/14を最後に見かけていないらしく、「次に会ったら保護する」とせつなそうに言っていた。


クロちゃんは数年前から首下に皮膚病を抱えていた。顔の大きさくらいに皮膚がただれ落ち、赤く見える皮膚はいつも痛々しかった。しかし、先住の動物やマンションの規定を考えると保護することが厳しかった。


今朝、ようやくエサをあげていたおばあさんに会えた。
恐る恐るクロちゃんのことを聞いたら、気難しいおばあさんだけど丁寧に話してくれた。
「ああ、クロね、急に2、3日水もカリカリもなくならなくてね、たぶんどっかで死んだんだろうね。猫は死に際見せないらしいからね。寿命だよ。もう歳で最近ゴハンもあまり食べなかったし。来ないから置いといてもしょうがないから片付けたよ。」


死んだと決め付けてしまうのも抵抗はあったけど、あんなに自由なのに何年も同じ場所に居続けていた猫がいなくなったのだ。何か特別な理由はある。


切なくて思わず涙が出た。
でも、クロちゃんはずっと住んでいたここを離れたどこかに行ったのだ。そこはきっとこの場所より居心地のいいところに違いない。
猫は居心地のいいところを探すのが得意な生き物だ。夏の暑さからも冬の寒さからも解放されるところに行ったのだ。首の痛みにも苦しまなくてよくなったはず。ずっと頑張って生きてたね。みんながそれを知ってるよ。
クロちゃん、何年もみんなを癒してくれてありがとう。